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断れない誘いから始める


★こちらの申し出を相手に受け入れさせるには、軽いことから始める手があります。心理的にはほとんど抵抗を感じないような事柄から始めて、少しずつ道を切り開いていくのです。



会社に気に入った異性がいても、部署が違うためきっかけがつかみにくい場所など、このテクニックは便利です。

いきなり、食事や映画に誘っても、日頃さほど顔を合わせない相手だと、あっさり断られかねません。さらに誘い続けたら、しつこいと思われるだけです。

そこで、最初は退社時間を合わせ、「駅まで一緒に帰りましょう」とさりげなく声をかけます。さほど互いのことは知らなくても、相手は「同僚だから自然なこと」と解釈するでしょう。並んで歩くだけですから、とくに断る理由もないはずです。オフィスの延長のような気分で、歩き始めることになります。

しばらくは、その日の仕事や会社の話などをしながら歩く。そして、頃合を見て、次のステップへ続きます。あくまで軽く、ついでのように、
「時間があるから、お茶でもどうですか?」
と誘います。話が弾んでいれば、相手は自然と「もっと話してもいいかな」という気持ちになります。「ついでだから」というオフィスの延長気分は、気楽なコーヒータイムとして受け入れやすいです。

喫茶店でも話が弾んだら、そのときが正念場です。「今度、お食事でも・・・」と、デートに誘います。それまでに相性のいい相手だと思わせておけば、案外、あっさりOKするかも知れません。

その後も同じことです。食事や酒の後は「家までお送りしましょう」と、少しずつ親密度を高め、接近していけばいいでしょう。

心理的に抵抗の少ないことから始めて、断りにくい立場に追い込む方法は、セールスでよく使われます。訪問販売の世界に広まった「フット・イン・ザ・ドア」です。まず、ドアを開けさせ、その隙間に足を入れて閉じられないようにし、相手との対面に持ち込むから、そう呼ばれます。デートに誘う手法は、その応用です。

車のセールスマンが「とにかく、お目にかかるだけでも」から始めて、相手に会えたら、次はパンフレットを取り出し「機能を説明するだけでも」と進み、さらに「もし、よろしければ試乗を」と話を進めていくのも、この手法です。

人は、最初の小さな頼みごとをOKすると、それに続くちょっと進んだ頼みごとも受け入れやすい心理になります。最初の依頼を受けたとき、断る理由はあるのですが、たいした頼みでもないし、手間がかかるわけでもなく、自分にとってとりたてて不利益ではないとなれば、つい受け入れるものです。

そして、ひとつ受け入れると、自分の態度に自分で縛られたようになり、次の依頼を断れない心理に陥ります。初めに小さなことだから断る必要もないと思わせさえすれば、その先も格段にやりやすくなり、最終的に陥落させることができるのです。





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