■低い声で話すと、肩書きよりも説得力を持つ

緊張は表に見せてはいけません。とくに交渉の場などでは、相手の目をごまかし、常に平静を装うことです。その方法は、さほど難しいことではありません。

★ポイントは、声のトーンです。普段の声より高さを落として、低い声で話すのです。



普段は落ち着いているのに、重要な会議での発表になると、声が震える人は珍しくありません。はた目にもわかるほど焦って声が裏返り、ますます緊張して表情が強張り、結局失敗します。

うわずった声には、説得力がありません。たとえば、町中で強面のの男とすれ違いざまに肩がぶつかり、
「どこ見て歩いてんだ、コラッ」
とすごまれても、それが甲高く細い声では笑えるだけです。恫喝が威力を発揮するには、ドスの利いた低い声でなければなりません。

脅さないまでも、声のトーンは信頼性に関係してきます。いくらたいそうな肩書きがあっても、医者や弁護士、ニューキャスターなどが、甲高く細い声で話したら、話の中身までうさんくさいと思われてしまうでしょう。

★他人に与える印象は、声によって大きく左右されます。高くて細い声は、弱々しさや未熟さと関連付けられ、反対に、音程の低いどっしりした声を出せば、落ち着きがあるとみなされ、知識が豊富で、権威があるとまで思い込ませる力があります。

低いトーンに加え、はっきりと発声することも重要です。発声があいまいだと、知識不足で自信がなく、神経質な性格だという印象を与えます。一方、明確な発声は、自信に満ちた有能な人物を印象付けます。話の内容が伝わりやすく、自分の意見をすんなりと受け入れさせるメリットがあります。

力強く、低い声を出すには、腹式呼吸が役に立ちます。姿勢を正し、鼻から息を吸って、腹部へたっぷりと空気を送り込むのです。こうして横隔膜を使って腹式呼吸にすると、自然に落ち着いた低い声が出ます。

人間というのは、緊張すると、ドキドキして胸で呼吸をしがちです。呼吸が浅くなり、空気が肺に十分にはいらなくなります。これが声の震えや甲高いトーンの原因です。声を出すのに必要な空気が足りなくなるのが問題なのです。

腹式呼吸を使った対処法を覚えれば、もう怖いものはありません。とくに高度な工夫や努力も必要ありません。声の高さを落とし、はっきりと話すようにすることで、自信がついて緊張感もほぐれ、焦りがなくなります。

★会議での発表だけでなく、商談や上司との打ち合わせでも、低い声で明瞭に話すことは効果を発揮します。頼りになる人物だと、思い込ませる小道具になります。異性にアピールするときも同様です。口説き文句は、低いトーンに限ります。